南国でも食べたかった生牡蠣

もう40年程前になりますが、仲間との飲み会で生牡蠣を食べ、その仲間の中で私を含めて3人が翌日にダウンしました。私は医者に行くほどの状況では無かったので、はっきりとした原因は判りませんでしたが、後で3人が、と聞いた時には牡蠣を悪者にしたものでした。それ以来、生牡蠣には恐怖心が有ったことは事実ですが、決してあの味が嫌いな訳では有りませんので、他の人が食べて少ししてから、みたいな食べ方になっていました。その少しが、最初は15分、そして10分、やがて5分になり、いつの日か、皆より先に、になるのに1年とかからなかったと思います。牡蠣の料理には様々な種類が有りますが、「牡蠣鍋」を好み、「生牡蠣」を怖がるのは日本人特有で、欧米では逆に生牡蠣が主流と聞いた事があります。

 私は仕事の関係でシンガポールに何年か住んでいました。赤道直下の暑い国で、一年中半袖で生活できる所でした。そんな国ですが、一流ホテルでは「生牡蠣」を食べる事が出来ました。そう、一流ホテルでです。衛生管理が行き届いている、と思われる一流ホテルでだからこそ食べる気になるのです。それ以外の所ではやはり日本人に悪者扱いされる可愛そうな牡蠣でした。ところがそこは一流ホテルだけに、牡蠣に加て別のメイン料理を頼み、ワインでも飲むと相当な料金になってしまいます。従って行くには結構な腹決めが必要でした。それだけに、そこでの生牡蠣デビューでは、大きめなものを6個程ぺろりとし、大満足したものでした。

 シンガポールでの仕事ではそこからの海外出張が多く、オーストラリアのシドニーには何回か行きました。そこには日本と反対の四季があり、日本の夏が冬、冬が夏でしたので、常夏のシンガポールのように牡蠣を悪者にする事なく、安心してその味を堪能できる時期があります。そんなシドニーへの出張が私は楽しみで、なるべく牡蠣が上手い季節に出張計画を、と言うのは冗談ですが、その時期には必ず生牡蠣を楽しみました。一緒に行くオーストラリア人はメイン料理の前に1ダース、12個をペロッと食べる人が殆どでした。レモン汁やタバスコをかけてペロっとやるシドニーの生牡蠣は、値段もリーズナブルで最高でした。そんな海外生活から戻って数年、今でもやはり「鍋」が主流の日本ではありますが、一流ホテルに行く必要もなく普通のスーパーで買える生食用の牡蠣は、やはり私の大好物で、40年前に一瞬たりとも悪者扱いした事を申し訳なく思っている今日この頃です。